東京工業大学
『サイレントボイスとの共感』地球インクルーシブセンシング研究拠点

東京工業大学
『サイレントボイスとの共感』
地球インクルーシブセンシング研究拠点

イベント報告

第3回東京工業大学COIシンポジウムを開催 (2018年11月20日)

 第3回目となる東京工業大学COIシンポジウムを大岡山キャンパスのレクチャーシアターで開催しました。 会場には企業や大学、COI関係者など約150名の方々に参加いただきました。 今回のシンポジウムは「地球インクルーシブセンシングが目指す社会」という新しいコンセプトの下、 地球上の人類の枠を超えた様々な声なき声(サイレントボイス)に耳を傾け共感する(インクルーシブセンシング)ことにより、 人・社会・環境などの問題に対して、人を通じて低環境負荷で人と地球に優しい方法で解決していくサイクルの実現を目指すという観点から、 国立研究機関や参画企業の皆様にもご登壇いただいき、先端技術をどのように地球環境に役立てるかをテーマに関してパネルディスカッションを行いました。


 
会場のレクチャーシアター


会場のレクチャーシアター


 まず開催にあたって主催者として東京工業大学の益一哉学長より挨拶がなされ、本拠点COIに対する取り組みと現状を紹介致しました。
 次にご来賓の文部科学省・学術政策局長の松尾泰樹様より、COIプログラムの社会的意義や成果について紹介をしていただき、本拠点COIの成果及び社会実装への期待のお言葉をいただきました。 次いでCOIプログラムビジョン2リーダーの小池聡様から、現在IoTやAI, Society5.0などの用語が流行語のように使われている今日において、 当COI拠点がさらに新しい概念を提唱して壮大なテーマに取り組んでいることから、本シンポジウムの講演や議論を期待しているとのお言葉をいただきました。


  
     東京工業大学 益学長      文部科学省 松尾局長  ビジョン2小池ビジョナリーリーダー


東京工業大学 益学長


文部科学省 松尾局長


ビジョン2小池ビジョナリーリーダー


 基調講演では、まずソニー株式会社執行役員次世代技術連携担当の島田啓一郎様から「人の眼を超えた先端イメージセンシングがとらえるサイレントボイス」と題して、 イメージセンサ開発の現状を紹介していただき、最近20~30年で機能や性能が飛躍的に向上している状況で、今後これらをどのように利用していくかについて、またAIも取り入れることであらゆる分野での応用が期待できるとのご説明をいただきました。 今後はこれら技術を利用するにあたって利用者側との連携が非常に重要であるとの示唆をいただきました。



ソニー島田執行役員のご講演


ソニー島田執行役員のご講演


 また農業・食品産業技術総合研究機構の農業環境変動研究センター企画管理部長の山本勝利様から、「人が織りなす里山の自然とその変化」と題して、 特に我々のコンセプトの中に入っている「里山」について専門的な立場から解説していただきました。 里山とはもともと草山であり薪や炭などの燃料から家畜の餌や肥料など人間の生活に必要なものが里山で生産されていたものが、 戦後ほとんどの物が石油から作られるようになり里地里山の利用価値が喪失していったこと、 また放置された里山は自然に戻るのではなく荒地に変貌し生態系も崩れてしまっている現状について説明していただきました。


 最後の講演として広島工業大学情報学部長・教授の濱崎利彦様より、「超低消費電力通信が拓く新しい世界に向けて その応用と課題」と題し、 IoT技術の応用例として、広島の牡蛎養殖における海面の様子を遠隔でモニターする技術や、田畑や森林帯におけるLPWA電波伝搬技術について説明を受けました。


  
山本部長           濱崎教授


農研機構 山本部長


広島工業大学 濱崎教授


 その後休憩を挟んで、本拠点の廣井プロジェクトリーダーから、本拠点の目指す姿として、 地球インクルーシブセンシングにより地球のサイレントボイスと共感して人と地球が共存共栄する社会の姿とプロジェクトの概要を説明するとともに、 続いて若林研究リーダーより地球インクルーシブセンシングに係る研究開発の状況を説明致しました。


 

      廣井プロジェクトリーダー            若林研究リーダー


廣井プロジェクトリーダー


若林研究リーダー


 以上の講演を基に「先端技術をどのように地球環境に役立てるか」と題して、東京工業大学西條教授がファシリテーターとなり、 講演登壇者に加えて、本COIのサテライト拠点である信州大学農学部の竹田准教授が加わり、パネルディスカッションを行いました。
 まず竹田准教授より、社会実装の一例となる動物のサイレントボイスを聴いて畜産業におけるアニマルウェルフェアの効用について紹介し、 山本様と濱崎様からは里山の保全と回復には人間の手入れを必要とすることや広島における共助の状況を紹介されました。 単に先端技術を導入するだけでなく、人間自身の生活も考慮した観点が必要との有益な示唆をいただきました。 なおソニー(株)の島田様から、先端技術を応用するにあたり半導体製造メーカーは利用者側と離れていているので、 利用者側のニーズを十分吸い取ることが必要であり、そのためには製造業者側と利用者側との共創が非常に重要であるとのご意見をいただきました。 当COIでも実際に畜産農家を訪問したことを紹介し、今後とも出来る限り現場を見て研究開発することが重要との意見で一致しました。



全体討論の様子


 最後に、東工大の渡辺治理事・副学長より、多数の方々の参加していただいたことへの感謝の意を表し、 COI活動に対し大学として出来る限り支援していくことを表明し、シンポジウムを閉会致しました。
 この度のシンポジウムに際し、ご多忙の中ご登壇いただきました皆様やご来場いただきました数多くの参加者と関係各位に厚くお礼を申し上げます。