東京工業大学
『サイレントボイスとの共感』地球インクルーシブセンシング研究拠点

東京工業大学
『サイレントボイスとの共感』
地球インクルーシブセンシング研究拠点

地球上のサイレントボイスと共感し、共存共栄する社会へ

“地球インクルーシブセンシング”が目指す社会

 今人類は、人口増加と経済発展による食料・エネルギー・環境問題に加え、特に日本では人口バランスの変化やライフスタイルの変化(特に1人暮らし高齢者の増加)という大きな問題に直面しています。 今までは病気や事故が起こってから対応する、農薬や肥料を必要以上にまんべんなく撒く、という方法を取ってきましたが、これらの延長線上で経済発展を遂げようとすれば、高いコストや環境負荷により破たんする可能性があります。 即ち、これからは不都合の事態を未然に予測検知しフィードバックすることにより、低いコストで事前に対処することが望ましいと考えます。 これを実現するには、低コストで"必要な人に必要な情報を必要なタイミングで知らせる"仕組みが必要となりますが、現在半導体技術とコンピュータサイエンスの目覚ましい発展により、これが可能になりつつあります。

 具体的には、地球上のあらゆるものをセンシングし、AI処理により低コストで必要なタイミングで必要な情報として知らせます。 即ち今まで人が主に能動的に情報発信していたものに対し、地球上の動植物、環境、構造物全てからの「声なき声(サイレントボイス)」を人間社会に伝えるものともいえます。 言い換えると、ICTを人間社会の枠から、それを超えた地球社会へ拡張させることでもあります。

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 限られた地球環境の中で、経済発展によるQoL向上を目指す人類にとっては、これから地球上における人間以外の生物との共存共栄は必須となるでしょう。 今日、ICTの目覚ましい発展により人類は国境や民族を超えた人々との意思の疎通や共感が可能となり、数十年~数百年前と比較して地球上の人類同士を身近に感じるようになりました。 これからはICTを使って人間以外のサイレントボイスに耳を傾け、声なき存在を身近に無意識に感じることは、地球環境との共存共栄において必要なことと思われます。

 ところで情報のフィードバックの方法についてはロボット等の機械による自動化と、人間への通知という2つのやり方があります。ここで自動化に頼らず、敢えて人にフィードバックすることを我々は主眼とします。 これにより"人々が明るく助け合う社会"へと繋がる可能性が考えられます。 物質的な幸福価値から精神的な幸福価値へ変わりつつある現在、自身の存在意義を以前に増して問うようになるでしょう。 人へのフィードバックを用いることにより、助けを必要としている人への個々の行動を促し、結果、夫々の個人が常に誰かから必要とされている、という社会を促す可能性があります。 従って、"地球インクルーシブセンシング"はICTによる技術の開拓だけではなく、人々やコミュニティー等、社会へのフィードバックをどのように行うか、という課題にも取り組まなくてはならないと考えます。


地球上の人類の枠を超えた様々な声なき声(サイレントボイス)に耳を傾け共感する(インクルーシブセンシング) ことにより、人・社会・環境の問題に対して、人を通じて低環境負荷な人と地球に優しい方法で解決していくサイクルの実現を目指します。

雷写真:音羽電機工業様提供

今まで感じてこなかった声を聴く“インクルーシブセンシング”

 「インクルーシブセンシング」とは、地球上の自然、里山、社会、人に存在する、今まで測ることができなかった・気づかなかった現象を、今までできなかった方法で、必要に応じて超高感度に測ることをいいます。 今まで私たちには関わりがあると思っていなかった現象も排除することなくセンシング対象を拡げます。

“サイレントボイス”に声を与える

 「サイレントボイス」とは、今まで測ることができなかった・気づかなかった現象を、新規のセンサ技術および既存のセンサ技術を用いて顕在化させた統合的データのことです。  私たちは、上記センサ技術により取得されるデータをAI処理により、解釈可能あるいは私たちに関わりのある情報にすることを「サイレントボイス」に声を与えると表現しています。

人々の自発的な行動を促す“地球インクルーシブセンシング”

 「地球インクルーシブセンシング」とは、地球上の自然、里山、社会、人に存在する今まで測ることができなかった・気づかなかった現象を含めてセンシングし、解釈可能あるいは私たちに関わりのある情報として人々に提供し、自然と私たちを一つの有機体として捉えて人にフィードバックすることをいいます。